《欧亚美术》  犍陀罗艺术 

Gandhara Antiques specialty shop
 

■店舗案内

■ご注文方法

 Column

COLUMN 60


L'Art Gréco-Bouddhique du Gandhâra

 



『ガンダーラ美術Gandharan Art 』(T,U)を完成させたのは、25年ほど前になる。私が55才ごろである。『ガンダーラ美術』奮闘記を以下にまとめてみる。

 Alfred Foucher (1865〜1952) というフランス人がいる。サンスクリット語(古代インド文字・書き言葉)が、彼以上にできる人はもう現れないだろうと言われた硯学であった。サンスクリットで書かれた文献を読み漁り、まとめたのが ” L' Art Gréco-Bouddhique du Gandhâra”であった。私はフランス語が多少できたので、この本に挑戦することにした。ガンダーラ研究の嚆矢であり、バイブルである。
 


 挑戦するといっても、この本はどこにある?神田の古本屋に尋ねたら、探してあげますとのこと。数日してかえってきた返事が、あるにはあるが百万円もするという。当時の私には(今もだが)、百万はとてつもなく高価であった。ではどうする?国立国会図書館と早稲田大学図書館にあるという。父(早大名誉教授)を煩わせて早稲田から借りるのも気が引けるので国立国会図書館に行ったが、「貴重本にクラシファイしているので出せない」とのこと。「国会議員なら貸し出せる」ともいう。国会議員がそんな本読むのかよ?ホントにもう! 国会議員の秘書を知っているという友人がいて、彼が話をつけてくれた。秘書氏の名でやっと借り出しコピーをとるのだが、1回で全部はいけないという。では2回でとればいいではないか。かくして膨大な量になった。高さは50pぐらいになったか。



 さて、それからが大変である。毎朝5時に起き、会社に着くのが6時頃、それから他の社員がくる9時30分ごろまでの間、毎朝少しずつ読んだ。それが非常に楽しかった。フーシェのフランス語は100年ほど前のフランス語なので少し読みにくいということはあったが、彼の解説している実物が私の目の前にあるわけである。「あっ!これだ」「これがこういう意味なのか!」といった具合で……ある意味興奮しながら読んだ。

 抄訳しながら書いたのが、冒頭の『ガンダーラ美術 Gandharan Art』である。朝の会社での3時間ほどであったが、読み終えるのに4年かかった。だけど楽しかった。この分野の、ある学者先生が、「栗田さん、あの本よく読みましたね。皆あの本を読んだふりをしていますけど、実は読んでいないんですよ」……でしょう?


高さ50pほどのフーシェのそのコピーが私のところにないのがさみしい。アメリカにいる日本人の女性が、私のその本を英語に訳してくださった。その際参考になると思って、そのコピーを全部彼女に差し上げてしまったのだ。

 ちなみにフーシェの本は英語に訳されていないと思う。となると、抄訳であるが、フーシェのこの本が英語に訳されたのは、私の本が初めてではないだろうか。

 

 

 

 

 Copyright(C) 2005 Eurasian-Art Inc. All Rights Reserved.