COLUMN 44 |
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マッタ
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ガンダーラは盆地になっていて、その中心にペシャワールがあります。
その盆地の北が山岳地のスワートで、奥に行くに従って深い山になります。
スワートの北西の谷間にマッタというところがあり、後期のガンダーラが出土します。
図1は典型的なマッタのテラコッタです。
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図1 |
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スワートから出土するスワート・ブロンズと全く同じ顔立ちです。ブロンズ製のものはガンダーラでは後期のもので5〜6世紀。一番古いものでも4世紀だろうと私は思っています。新田さんがメトロポリタンミュージアムに寄付なさった有名な仏陀坐像(キリストのような光背をもつ)を
、メトロポリタンも新田さんにならって2世紀と記し、田村靖子先生も同じく2世紀となさっていますが、私は4世紀あるいは5世紀だと思います。2〜3世紀にはまだブロンズは出てこないと思います。
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このテラコッタの仏頭もスワート・ブロンズ坐像と同じ5〜6世紀(人によっては6〜7世紀とします)だろうと思います。頭髪にブルーの色(ラピスラズリの粉)がよく塗ってあります。
この仏頭を台に付けるために首に穴をあけようとしたら、ぽこりと割れて首の内から印字された円盤が出てきました。すなわち文字で書かれた円盤が首の内に埋め込まれていたわけです。すなわち体内に埋め込まれた経文です。図2がそれです。
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図2 |
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また、小さいテラコッタの仏塔の中に、文字の書かれた円盤が埋め込まれていました。
やはりスワートからよく出る泥塔です。
これにもこの文字盤が内に必ず埋め込まれています。
図3、図4がそれです。
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図3 |
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図4 |
この文字盤をフランスのフスマン先生に送って読んでもらいましたら、「4〜6世紀に使われたブラフミー文字で書かれていて、すべてのものは原因から生じるのであって、如来はその原因を説かれる。またそれらのものの滅をも説かれる。」というのがフスマン先生の説明です。
仏教の真髄を表現した“縁起偈”として知られているものです。
仏頭や仏塔の中に経文が込められるのは中国・日本でもありますが、
やはりその起源はガンダーラだったようです。
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