《欧亚美术》  犍陀罗艺术 

Gandhara Antiques specialty shop
 

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COLUMN 4


ガンダーラ
秘話(3)

メトロポリタン博物館
 

 

 古美術の世界と学界にショックを与えた。まごうことなきローマ彫刻がガンダーラの地ペシャワールから発見されたからである。はたして ガンダーラ仏教彫刻であるかとも考えられたが、頭髪の形、特にその肉髻の形はガンダーラ以外には考えられないというところで落着く 。ご他聞にもれず、ニセモノ説が学者から出る。フランスの老学者(前科あり)が堂々と。

 製作地が問題になった。ローマで作られて運ばれた。あるいはローマの彫刻家がペシャワールに来て製作した。この問題は決着がつ いていない。また大理石を科学分析すれば、その出た鉱山が特定されるらしい。その分析がなされているとも聞くが、結果はまだ耳にしていない。それがわかったとしても製作地は特定できないだろう。全くの想像であるが、私は、「ローマの彫刻家が来て作った」と思ってい る。アフガニスタンのクパショトール遺跡などを見ると、ローマの彫刻家の作ではないかと思われるからである。

 何人かの学者が論文を発表しているが製作年代はほぼみな3世紀後半で一致している。このころ以後にローマからの直接の干渉が あったように思われる。その一番顕著な例がアフガニスタンのハッダである。ハッダは「ローマの文化的植民地」と私は考えている。ちなみ にガンダーラの「ストウッコ技術」はローマのそれだそうな。ストウッコがはじまるのもこのころのようである。

 さてこの尊像をオルティスは「シッダルタ太子(すなわち釈迦菩薩)」と命名し、他の人たちにもそう呼ばせているようだ。このはではでし い頭髪からして、菩薩と呼びたくなるのはわかるが、シッダルタはおかしい。太子ならターバン装飾とならなければならない。菩薩なら弥勒であるが、私は「仏陀」の可能性ありと考える。頭髪の突出部分がひもで結わかれていないのと耳飾りの形跡がない。ニューヨークのメトロポリタン美術館にあるテラコッタの頭部(写真)をメトロポリタンでも菩薩と書いているが私は仏陀だと思っている。こちらは耳飾りがはっきりないからである。

 いずれにしても、鼻が完全に欠損し、割れに割れたこの頭に目をつけたオルティスの審美眼に敬意を表わしたい。どこかの美術館に 収蔵され、誰にでも見られるようにしてほしいものである。(終わり)
 

 

 

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