《欧亚美术》  犍陀罗艺术 

Gandhara Antiques specialty shop
 

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COLUMN 20


コレクター(3)
 


 氏がバスを使って通勤なさるという話はつとに有名である。老人無料パスを使って、白金台の旧渋沢栄一邸から新橋まで。さっさと乗ってバスの空席を見つけるのも早かったそうである。むだなお金は一切使わない。あるとき氏の事務所の外のイスに坐って順番を待っていたことがある。大きな声で電話なさっているので外からもまる聞こえ。旅行代理店と香港までのチケットの交渉をご自身でなさっていたようである。「オマエんとこは高い。やめた。」ガチャンと。そして私が部屋に入って行くと「香港は近いから、一等に乗ることないやな。」


 それから数日後、「松岡氏が香港のオークションで、中国の皿を6億(?)で落札」という記事がいくつかの新聞に出た。その当時(3040年前)、6億というのは香港オークションでは古美術の最高値とさわがれたように記憶する。ある新聞では「こんな日本人がいるのを誇りに思う」とまであった。

 香港行きのチケットを値切っていた人が数日後に6億円の買い物をする。これが松岡老人である。

 

 もう一つ、事務所の外で待っていたときに聞いた話。大きな声でお話しになるから外でよく聞こえる。盗み聞きしたわけではない。

 インドに宝石の買い付けによくお出かけになったそうな。部屋の内で、地方紙の記者のインタビューなさっていた。「買った宝石はポケットに入れてな、税関通る。オレなんか絶対に税金は払わんからな。」話し相手は新聞記者である。当時宝石の関税は、べらぼうに高かった。

 インドに同行なさったアシスタントの方からこんな話を聞いたことがある。宝石(ルビーかなんか)を買って、ホテルに帰って、部屋で、掌に石をじゃらっとのせて、「こんな美しいものが、紙切れで買えるんだものなぁ。」とおっしゃたそうな。

 一銭一厘を無駄にしない人ではあったが、お金に関しては一種冷めたところ、ニヒルなところがあったようだ。でなければ、6億の“皿”を買うことはできない。

 

 先日もあるお客さんが「こういう美しいものを知らないで死んでしまう人はかわいそうだね。そんだね。」とおっしゃった。そういう人たちによって、美術ひいては文化というものが支えられつづけるのだ。松岡老も同じような考えの持ち主だったのだろう。

 おわり

 

 

 

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