《欧亚美术》  犍陀罗艺术 

Gandhara Antiques specialty shop
 

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COLUMN 14

 

世界最古の経典
 


 樺皮の経典について書いたついでに、このことも書いておきたい。ここのところたくさん出土した経典は
7世紀前後のものでブラフミー文字(梵字)で書かれている。
 

 ガンダーラ初期1~2世紀に使われた文字にカロシティー文字(Kharosthi)がある。ガンダーラの彫刻に「……の寄進」などと書かれているのはたいがいこのカロシティー文字である。図2は有名な“ブラッセル仏陀というあだ名のついたレリーフであるが、この下の部分に「……カニシカ5年」という銘文があり、多くの学者が論文を書いた。カロシティー文字で書かれている。

 

図2

 

 カロシティー文字で書かれた経典は存在しないのか。
20年ほど前それが私の目の前に出現したのである。私がペシャワールに行ったとき、写真3のような、樺皮に書かれた巻子がたくさん入った壷が私の前に出て来た。巻子を一つ取り出してみると(写真4)、今にもバラバラにこわれそうな樺皮に黒いカロシティーとおぼしき文字が見える。私にはそれが経典であるかどうかは全く見当がつかない。ただ貴重なものだとは即座に思った。そして買った。
 

写真3 写真4




 その後、その業者とトラブル(大きなニセモノを買わされ)になった。そしてこの壷は私のところにはついに来なかった。

 ただ、それが貴重なものであるとは思っていたので、とった写真を東海大学の定方晟先生にお見せした。巻子にのぞいている文字だけでは何もわからないのだが、壷の背にカロシティー文字で大きく書かれている一文があった。先生はそれを論文に書かれた。「説一切有部」の文字がはっきり読み取れた。その壷・巻子が出たのはアフガニスタンのハッダということがはっきりしているから、ハッダ近辺に「説一切有部」(小乗仏教における一番大きい学派)2世紀ごろに進出していたという論文の主旨だったと記憶している。
 

 その後、数年たったとき新聞に大きくとりあげられた(写真5)「世界最古の仏典発見」の見出し。
 

写真5



 私のところに来なかったその壷はロンドンに飛んだそうな。そして、英国の業者から大英図書館に入る。アメリカのカロシティー文字に強いサロモン教授の目にとまり、
1~2世紀の教典だということになって、そのニュースは世界中をかけめぐった。日本でも四紙が書いたと思う。仏教国タイでは毎日のように新聞に出たときく。(つづく)
 
 

 

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